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執筆者株式会社
アルファ・ファイナンシャルプランナーズ
代表取締役田中 佑輝
セカンドライフに入り、時が経過してくると、
現役のころには考えることもなかった「築いできた資産を効果的に運用したい」、
「パートナーや子供にできるだけ多くの資産を残してあげたい」、といった
悩みや思いが出てくる人も少なくありません。
一方、余生は存分に楽しみたいという考えもあるでしょう。
そんな狭間にあるセカンドライフのお金を
楽しく安心して運営していくための資産管理方法をご紹介します。
総務省統計局のデータによると65歳以上の平均支出は単身世帯だと月13万1739円(ⅰ)、2人世帯だと月22万9029円(無職世帯)(ⅱ)となっています。介護費用や医療費用にまで目を向けると、介護であれば月平均7.8万円(ⅲ) が平均約4年7か月かかるとされています。厚生労働省によれば、生涯医療費の約50%が70歳以降で発生しています。
このように現役時代にはなかった悩みが出る一方で、自身の支出だけでなく、相続や終活について考え始めるのもセカンドライフの特徴です。
年金生活に入った途端、現役時代にもらっていた収入はなくなり、預貯金を取り崩す生活に変わります。50代後半から試算をして不足を感じる人もいれば、年金生活に入ってから気づく方もいます。さらに、前述の医療や介護など新たな支出の発生を考えると、収支のバランスが大きく崩れる人も。現役時代に比べ、保有資産をどのように効率的に①使う、②増やす、③残すというポイントに焦点を当てて考えなければならなくなってきます。
セカンドライフの資産管理法は収益性もさることながら安定性も大きなポイントであり、相続まで考えることが肝心になってくることがよくわかります。
セカンドライフの資産管理法は安全性が重要です。
安全な資産管理と聞くと、「預貯金が一番安全なのでそれを大事に取り崩すのが一番だ。」と思うかもしれません。しかしながら、資産全てを預貯金にするのには疑問符が付きます。その疑問符の理由はいくつか思いつきますが一番はインフレ(物価上昇)への抵抗力です。
バブル崩壊後から2013年までは考える必要もなかったインフレリスクですが、同年に日銀の総裁に黒田東彦(くろだはるひこ)氏が就任してからは様相が変わっています。以降、日銀の方針は前年比インフレ率2%を目指し、様々な金融政策を実行しています。仮に、目標通り2%のインフレが起きた場合、今年は1000万円で買えていた商品やサービスは、10年後には1200万円払わないと買えない状態になります。
これはお金の価値の目減りであり、仮に2%物価上昇している中で保有していた1億円は約8000万円(持っているだけで2000万円の損)になってしまうことを意味します。現在の銀行金利が2%以上あればインフレに負けない利息収入を得ることができることになりますが、残念ながらほぼゼロですので、負けてしまいます。このように一見安全な預貯金もインフレの力がかかると目減りしてしまうのです。
ここでは債券、リート、株式について簡単に説明していきます。
まずは債券です。債券は国や企業等が投資家から資金を借り入れるために発行する有価証券です。満期が定められており購入後、満期を迎えると額面金額が払い戻され、その満期までの間は利子がもらえます。途中での売却も可能ですがその際は価格が変動します。
債券には国内債券と外国債券がありますが、国内債券は円預金と同様インフレが起こると利息収入がインフレ率以下だった場合目減りします。一方、外国債券はコストプッシュ型インフレ(企業が仕入れコストなどの増加を転嫁することにより起こるインフレ)に対応しやすい資産と言われています。理由は、日本は食料エネルギー自給率が低く為替により輸入コストが上がるからです。
次はリートです。リートは投資家から集めた資金でオフィスやショッピングモールなどの不動産に投資し、賃料収入や売却益等の運用成果を投資家に分配するといった金融商品です。不動産は一般的にデマンドプルインフレ(賃金の上昇などにより需要が増加したことにより起こるインフレ)に強い資産とされています。ただし、現物不動産と比べると金融商品であることから変動リスクが何倍にもなるので注意が必要です。
最後は株式です。株式も企業が投資家からお金を集める手段です。投資家は株式を購入することでその企業の株主になることができます。投資家は購入時よりも高い金額で売却することで値上がり益を得ることができます。また、配当金や株主優待などがあるケースもあります。こちらも、デマンドプルインフレに強い資産とされています。金融商品全般の特徴として、商品が多い点や流動性が高い点が挙げられます。
不動産運用にも多くの投資対象があり、ワンルームマンションから一棟アパート、貸しビルに駐車場、新築・築古など様々です。それぞれでリスクやリターンも違います。先述の株式のように売買益を重視する方法もありますが、多くは家賃収入を稼ぐことを目的とすることが多いのが特徴です。
金融資産運用との大きな違いは現物資産であるということです。現物資産は仮に大きな経済ショックが起きたとしても、最低限の価値の確保が見込まれます。同じく現物資産である金(ゴールド)も一定の価値があるという点では同じですが、インカム収入(利息、家賃など資産を保有することで発生する収入)がありませんので持っているだけでは何も生み出さないという点では不動産と異なります。
加えて不動産運用は、借り入れを使った運用が行える点も大きな特徴です。株式にも信用取引と呼ばれる取引がありますが、不動産は大きな金額を借り入れることもでき、レバレッジ(倍率)効果に期待して投資することができます。さらに、借入の団体信用生命保険を利用して生命保険替わりに買う方もいます。
金融資産運用と比べ、投資先が限られている点や金額がある程度決まっている点、流動性が高くない点やコストがかかる点なども抑えておく必要があります。
不動産運用に限らず運用全般の用語で、株式等の売買益を狙う方法をキャピタルゲイン運用、家賃や配当金、金利での収入を狙う運用をインカムゲイン運用と呼んだりします。
一般的にキャピタルゲイン運用は売買のタイミングが重要であり、利益・損失が出るまでの期間が不安定です。反対にインカムゲイン運用は、利益の大きな上振れを狙うのではなく収益が安定させることを目的とします。
このように、株式、債券、リート、現物不動産、金には異なった特徴がありますが、整理をするとこのような図式になります。
それぞれの特徴をご自身がしたい資産管理に合わせて検討しましょう。
セカンドライフの資産運用は相続税についても抑えておく必要があります。まず初めに相続税には3000万円+(法定相続人×600万円)の基礎控除があります。この金額より資産が少なければそもそも税金はかかりません。それでも発生しそうな相続税を減らす方法は、基本的に
の3つの方法が挙げられますが、①は単純にお金を使うことで達成できます。②は、オーナー経営者は株式評価を下げることが検討できますが、それ以外の方は現物不動産を購入する他選択肢がありません。③は不動産に関わる税制優遇を使うか、保険等の控除を使うことが一般的です。
ここまででお分かりの通り、相続税を減らす一番の方法は現物不動産資産の比率を増やすことです。残念ながら、預金、株式、リート、金等の資産は時価がそのまま評価額になってしまい、流動性は高いものの相続税は高くなってしまいます。
不動産だけは相続時の評価方法が実勢価格ではない数値を利用するため、時価を下回ります。その中でもマンションは通常の戸建てやアパートと違い、評価額を抑えやすくなっています。
マンションのサイズ、エリア等にも左右されますが、多くの場合、土地分は約70%、建物分は60%となるケースが多いです。
仮に実勢価格5,000万円(土地割合60%、建物割合40%)のマンションをざっくり評価してみると、
土地:5,000万円×60%×70%=2,100万円
建物:5,000万円×40%×60%=1,200万円
合計:3,300万円
このように現金を現物不動産に置き換えるだけで1,700万円分の財産が圧縮されることになります。
さらに、その不動産を賃貸用に貸していれば更に下がります。
土地評価を計算する方法:自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
2,100万円×(1-60%×30%×100%)=1,722万円
建物評価を計算する方法:固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
1,200万円×(1-30%×100%)=840万円
全体の評価額 1,722万円+840万円=2,562万円となります。
つまり、現預金や金融資産を使ってマンションを買うと評価額が約49%下がることになります。
セカンドライフと素晴らしい余生を過ごすために大切なことは、お金の使い方や残し方のバランスをよくすることです。人によってそのバランスは様々ですので、これからかかるであろうお金と残したいお金をそれぞれの価値観で整理してみましょう。その上で、安定した資産運用で安心したお金の生み出し方と残し方を確立させていくことでちょうどいい将来が見えてくるはずです。
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行で資産運用アドバイザーとして、金融資産運用相談、マネジャー、行員向け経済学を経て独立。フジテレビ、テレビ朝日、ラジオ日経などでメディアにも多数出演しながら、経営面でも金融、不動産、コンサルティングのグループ会社を経営し、「ニッポンの社長」に取り上げられるなど手腕を発揮。自身でも金融商品もさることながら、不動産物件を1棟8部屋所有し、実践的な資産運用の情報提供に努めている。